
街が眠りにつく頃、冷たい夜気が窓ガラスを叩く。
オレンジ色の街灯だけが、相棒である軽バンのフロントガラスを等間隔で照らしては消えていく。深夜2時。多くの人が温かいベッドで夢を見ているこの時間帯、私たちはまだ「本日の業務」を終えられないでいる。
街が眠りにつく頃、軽バンだけが走っている
2024年問題の死角にいる私たち
「2024年問題」。
テレビやネットで盛んに叫ばれたこの言葉は、私たち軽貨物ドライバーにとって、どこか他人事のように響いていた。
なぜなら、労働基準法の時間外労働規制の対象外である個人事業主の私たちには、そもそも「残業」という概念がないからだ。しかし、大型トラックが運べなくなった荷物のしわ寄せは、確実にラストワンマイルを担う私たちの荷台へと雪崩れ込んできた。結果として、労働時間は気づかぬうちに少しずつ延びている。

効率化という名のプレッシャー
単価は上がらず、荷物は増える矛盾
「効率化」という言葉が、現場に重くのしかかる。
配達アプリの画面には、消化しきれないほどのピンが立ち並び、時間は無情にも過ぎていく。「早く、もっと早く」。見えない誰かに急かされているようなプレッシャー。
ガソリン代は高騰し、車両の維持費もかさむ中、1件あたりの配送単価は一向に上がらない。配れば配るほど、手元に残るお金より、疲労だけが色濃く蓄積していくような錯覚に陥ることもある。多重下請けの末端で、私たちはただ黙々と荷物を積み、降ろす。
それでもハンドルを握る理由
誰かが運ばなければ、この街は止まる
それでも、エンジンキーを回す手が止まることはない。冷え切った指先で伝票を確認し、次の目的地へとアクセルを踏み込む。
なぜなら、私たちが立ち止まれば、この街の血流が止まってしまうことを知っているからだ。
深夜の静寂の中、ようやく最後の一箱を置き配した時、ふと見上げた夜空の星が妙に明るく見えた。泥臭くて、決して割の良い仕事ではないかもしれない。だが、誰かの「明日」を確実に届けるこの小さな箱は、私たちの汗とプライドで満たされている。
終わらない夜の向こうに、微かな夜明けの光が差し込み始めていた。


コメント